印刷用データ入稿時の注意点
印刷用のデータを入稿する際には、いくつか注意点があります。印刷は制作工程の終盤に当たり、納品までに時間的な余裕がない場合もあるため、データに不備のないスムーズな入稿を心がけたいものです。以下に基本的な注意点をまとめましたので一つずつ見ていきましょう。
1. ファイル名に日本語が使用されていないか
ファイル名に日本語を使用していると、文字化けなどのトラブルが起こる場合があります。また「/(スラッシュ)」や「*(アスタリスク)」、ドイツ語で使われる「¨(ウムラウト)」などの特殊記号も同様の不具合が生じることがあります。例えばInDesignファイルに配置した画像のファイル名に日本語があり文字化けが起きた場合、ファイル名が変わってしまうことによってInDesignファイルとのリンクが切れ、エラーとなってしまいます。こうした事故を防ぐためにも、ファイル名には半角英数字のみを使用しましょう。
2. 裁ち落としが正しく配置されているか
写真やイラストなどをページの端まで配置する場合は、仕上がりサイズよりも3mmほど大きく、はみ出すように配置しましょう。このはみ出した部分を「裁ち落とし」と呼び、最終的に印刷過程でカットされます。裁ち落としは「ドブ」や「塗り足し」とも言います。誤って仕上がりサイズぴったりに画像を配置すると、断裁した時のズレで紙の白い地の部分が出てしまう危険性があります。必ず裁ち落としを考慮した処置をしましょう。
3. 文字のアウトライン化
多くの印刷会社が推奨、または必須としているのが文字をアウトライン化したデータでの入稿です。アウトライン化することで文字が図形化し、フォントファイルがなくても文字を正しく表示できるようになります。InDesignやIllustratorはアウトライン化機能が備わっているため、フォントファイル不要の入稿が可能です。ただし、アウトライン化処理をすると文字が太くなったり、文字詰めが微妙に変わったりすることもあるため注意が必要です。また、一度アウトライン化してファイルを保存すると、アウトライン化前の状態に戻すことはできません。アウトライン化後のテキストの変更が困難になるため、必ずアウトライン化前のファイルをバックアップしておきましょう。
4. 入稿データに不備はないか
作成したファイルは勿論、画像を配置しているのであればそのリンクしている画像ファイル、そして文字のアウトライン化をしていない場合は使用しているフォントファイルが必要になります。InDesignやIllustratorには入稿に必要なファイルを1つのフォルダーに収集する「パッケージ」という機能があるので活用すると良いでしょう。ただしフォントによっては、使用許諾契約によりフォントファイルが収集されない場合があるため注意が必要です。
また印刷会社によってはデータの不備などのトラブルを回避するため、このような複数ファイルでの入稿を受け付けていない場合があります。依頼する印刷会社がどのような入稿形式に対応しているか事前に確認しましょう。
5. PDF入稿
印刷用のデータ入稿には、印刷に適したPDFに変換して入稿する方法もあります。印刷に適したPDFはフォントや画像が埋め込まれている状態のため、複数のファイルを添付する必要がなく、文字のアウトライン化も不要です。また入稿データのサイズ容量が小さくなるためアップロードも楽になります。印刷会社側でも負担が減るということもあり、PDF入稿を推奨する会社が増えています。
ただし、PDFで入稿する際はフォントが埋め込まれていなかったり、画像解像度が粗く出てしまったりしないよう、「PDF/X-1a」、「PDF/X-4」のような印刷に適した設定で作成する必要があります。